愛知の希少酒 醸し人九平次

15代目久野九平次氏をたずねて
萬乗醸造を訪れ、
日本酒に対する想いをお聞きしてきました。

日本酒の新しい楽しみ方を提案したい

『醸し人 九平次』をフランスの三ツ星レストランのワインリストに採用され、日本でも逆輸入的に日本酒ブームを起こすきっかけのひとつとなった酒蔵「萬乗醸造」の15代目久野九平次氏を尋ねました。
この酒蔵で特に大切にしているのが『酸』。旨み成分であるアミノ酸のほか、酸味にもこだわっており、『酸』の数値が高めなのが特徴で、肉料理に含まれる脂分を流し、すっきりした飲み口。本場の三ツ星レストランのシェフが取り扱いを決めたのも、フランス料理との相性がいいことを認めたため。この蔵の日本酒を肉料理である焼肉ともよく合うと考え、『じろうや 介』に置くことを決めたのです。
名古屋市緑区、大高駅からほど近く、路地を入った静かな場所にある萬乗醸造は、江戸時代初期の1647年の創業。門構えや看板からも歴史を感じることができる。このような老舗から、世界に向けて日本酒を送り出しているというから驚きます。
日本酒と言えば魚介との相性がよく、寿司などの和食に合わせるものという印象が強いですが、九平治氏は日本酒の新しい楽しみ方を提案したいと言います。
「究極はお酒の名前を覚えてもらえなくてもいい。それよりも渡邉さんの『じろうや 介』に行って、焼肉と日本酒って合うなって体験してもらうことの方が大事だと思うよ。」
そういった食べ合わせや『シーン』の提案こそ、日本酒全体底上げにつながるものであり、目指すものでもあります。

世界基準を目指し、変革のまっただ中

ちょうど前日に仕込み作業が終わったところということで、酒造りの様子を見ることはできなかったが、慌ただしい作業が一段落しており、蔵の中をゆっくりとみせてもらい話を聞くことができました。
酒造りというと、古くからの方法を引き継いでいるイメージがあるが、必ずしもそうではないと言います。「守るべき伝統もあるけれど、変わっていかなきゃいけないという危機感もあります。お客さんのニーズも変化していくので、それに合ったものを造ることも必要ですよね。」
米の洗い方を変えたことで、これまで以上にいい酵母ができるようになり、こうした変化を恐れない姿勢が、『九平次』をここまで育ててきたのでしょう。
萬乗醸造も、以前は大手メーカーの下請けで、安価な酒の大量生産もしていたそうだ。それが今の九平治氏の代になり、自分の酒は自分の顔で世に出したいと考え、変革が始まりました。
2013年には、スタッフをフランスのワイナリーに長期で研修に派遣。世界基準ともいえるワインの本場で感じたこと、考えたことを日本酒造りに活かすことで、化学変化を起こして新たな進化をうながすのが目的のようです。また山田錦の自家栽培に取り組み、自社栽培米のみを使った『黒田庄に生まれて、』を商品化するなど、酒造りも体制も含め、この酒蔵全体がまさに変革のまっただ中にあるようで、作り手であり、経営者であり、プロデューサーでもある。多角的な視点を持って日本酒を発展させていこうとする九平治氏に圧倒されました。

自分を通して表現すれば、そこに個性が現れる

当代の九平次氏は一風変わった経歴の持ち主です。老舗の酒蔵に生まれながら、大学時代に演劇の世界に飛び込み、モデルなどを経験したのち、酒造りをするために戻ってきました。「どこかで家業を否定する時期ってあるよね。敷かれたレールに乗りたくないというか。」飲食店を経営する父親を見て育った渡邉も、共感する部分があったそうだ。「やっぱり?僕の場合は演劇について勉強していたときの先生に、自分自身を客観的に見るため、『自分はどこから来て、どこへ行くのか』という禅問答のような自問自答をさせられました。自分のルーツって何かって考えたとき、思い当たったのが、この酒蔵だった。だから大人になったそのときの目で、ちゃんとここを見ておかなきゃいけないって思ったんだ。」
演劇の世界と、家に戻ってやる酒造りの仕事との違いに、戸惑いはなかったのでしょうか。「演劇というと特殊なものに感じるかもしれないけど、表現するという意味では同じ。どんな仕事も自分というフィルターを通して表現するものでしょう?渡邉さんなら、どんな飲食店でどんな料理を提供していくかで、個性が現れるんだと思うよ。」
『じろうや 介』は焼肉を日本料理のように提供し、それに合う日本酒を揃える店。そういったコンセプト、料理、お酒のひとつひとつが個性となるのでしょう。
グラスについて、メニュー表記について、料理に合わせるお酒についてなど、さまざまなアドバイスを受けながら、『主役』であるお客様に満足してもらえる店作りを心に誓いました。

革新的な日本酒を生み出す酒蔵

1647年創業。「醸し人九平次」はパリの三ツ星レストランのワインリストに採用されており、国内外で人気が高い。旨み成分であるアミノ酸のほか、酸味にもこだわっており、『酸』の数値が高く、肉料理に含まれる脂分を流し、すっきりした飲み口が特徴。ジャンルを超え、次々と新たな試みに挑戦している。

「醸し人 九平次」醸造元 株式会社 萬乗醸造

〒459-8001 名古屋市緑区大高町西門田41